保存療法で最も大切なことは、患者さんが治療に積極的に参加することです。
正座を避ける、重い物は持たない、カート・杖・装具を活用する、温める。(冷やす場合もある)
肥満のある方は体重の管理を始めましょう。歩行時に膝関節にかかる負担は体重の約2〜3倍、階段昇降時には約5〜7倍の負担がかかるといわれています。5㎏の減量に成功すれば歩行中には10〜15㎏の、階段昇降では25〜35㎏の負担軽減となります。
運動療法も積極的に取り入れましょう。
膝が痛いからといって安静ばかりとっていても、筋力低下が起こり歩行能力も低下する一方になります。多少痛くても20〜30分程度の散歩や、プール内歩行を行うことをお勧めします。
大腿四頭筋訓練もとても大切です。膝の下に丸めたバスタオルなどを敷き、つま先を上に向かせた状態で、膝下のタオルをつぶす練習を5秒間おこないましょう。左右交互に10回を1セットとし、一日に最低1セットは行いましょう。 運動習慣がつくようになると、脳内からは痛みを軽減させてくれる物質が分泌されることが分かっています。
膝痛が強い場合には、消炎鎮痛剤の内服や外用剤(湿布・軟膏)の使用が必要となります。
また関節内へのヒアルロン酸注射も有効とされています。
関節リウマチと診断された方は、抗リウマチ薬の内服により関節変形の進行を防止する事が可能です。
顆部壊死と診断された方は、骨粗鬆症を発症していることが多いので骨粗鬆症の治療薬を開始することもあります。
膝痛がしばらく続くと膝関節周囲の関節や骨盤、体幹の動きが悪くなり歩行時の運動連鎖がスムーズに行えなくなり、膝痛が慢性化しやすくなります。
このような時には、理学療法士によるリハビリが有効です。歩行時の運動連鎖を改善する装具療法として足底板治療(靴の中敷きを調節する治療)があります。
変形の進んだ膝では、膝関節に装着する装具を作成する場合もあります。
変形した膝に対しては3つの手術方法がありますが、それぞれにメリット、デメリットがあります。
膝関節内に棒状のカメラを入れて、関節内をのぞきながら関節内の軟骨を取り除いたり、変形で出来上がった骨のトゲを削り関節内を掃除する手術です。
膝関節の下で骨を切りO脚を矯正する手術です。変形した関節内を直接治す手術ではないので関節リウマチには適応がありません。比較的若い方に適応があります。
変形した関節の表面だけを取り除き、人工関節に入れ換える手術です。比較的高齢の方に適応があり、関節リウマチの方でもこの手術を選択できます。
適応 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
関 節 鏡 |
軟骨の すり減りが軽度 半月板損傷 |
体への 負担少ない |
効果が続かない |
骨 切 り 術 |
O脚 比較的若い 活動性が高い |
スポーツ、 重労働が可能 |
日常生活に 戻るまで 時間がかかる |
人 工 関 節 |
変形が大きい 比較的高齢 |
痛みの原因を 根本から 取り除く |
正座は出来ない 激しい運動 が出来ない |